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問題多い「介護ミス」による事故(後編)
問題多い「介護ミス」による事故(後編)

問題多い「介護ミス」による事故(後編)

「転倒や転落による事故」「誤嚥事故」のパターンを見ると、一見介護側に責任はなく利用者が自分で起こした事故だという主張が通りそうに見えます。
事実、裁判にまでなった事件でも、なかなか介護側の過失と事故との因果関係が証明できないという場面がありました。
これは世間一般が介護職の専門性を認知してこなかったことと関係があると思います。
一方、時代は少しずつ変化しています。家族が介護するのが当たり前であった時代は過ぎ介護をプロの手に委ねることが当たり前になりつつある現在では「介護職にある人間が負うべき責任や義務」が問われるようになりました。

入浴介助の事故防止、5つの基本

介護ミスの中で重大な結果を生むのが入浴中の事故です。場合によっては、死亡事故につながることがあります。
要介護者でなくても入浴中、湯船の中で溺れたり体調異変が急に襲ってきたりすることがあるので、介護職としては十分に慎重にならなければなりません。

入浴事故防止には5つの基本があります。
まず第1は入浴前のバイタルチェックです。第2は浴室の環境チェック。第3は入用中や入浴後の利用者の様子の観察。第4は利用者の一つ一つの動作に、適切に声掛けすること。第5は入浴中の利用者のメンタルケアです。

入浴前のバイタルチェックについては入浴直前に行うことが求められます。
その日一日調子が良かったからとチェックを怠ってはなりません。往々にしてバイタルチェックは看護師にお任せという所も多いのですが看護師の配置が厚くないところもあります。
そういう所ではなおざりな直前チェックになりがちですので、気をつけねばなりません。
介護職の人も、利用者の「顔色」「皮膚の色」「食欲の有無」や「睡眠状態」について積極的に看護師に報告し、口頭だけでは抜け落ちることがあるので専用の連絡メモを作る必要があります。

浴室の環境チェックには3つのポイントがあります。
一つは床が滑りやすいかどうか。二つ目はお湯の温度に気をつける、シャワーから急に熱湯が飛び出さないように気を配る。また脱衣所の気温にも気を配る。三つめは利用者に合った自助具が揃っているかどうかです。
入浴はいろいろな人が担当するでしょうから、チェックする項目を決めてシートを作成しておくといいでしょう。
在宅の場合は浴場の状態が介助にふさわしくない場合もあるので、初回の訪問時にサービス提供責任者が同行して、現場で注意点を確認して介助者に助言をする必要があります。
入浴中は必ず利用者の顔色や皮膚の色、息遣いなどを観察する必要があります。
入浴中に溺れる事故の場合はいくつかの「沈み込み」のパターンがあるので、事前に図解などを利用して研修しておくことが必須となります。
利用者の中にはADLが低下している人がいて、そういう人にとっては入浴は想像以上に恐怖感に満ちているのです。
恐怖感から来る過度の緊張が身体のバランスを崩して事故につながるという場合もあります。
利用者の緊張をいかにほぐすかが入浴事故防止のポイントになります。

利用者の緊張を和らげることは、介護のすべての場面で必要になります。
入浴の場合は、特に利用者を恐れさせないように、一つ一つの動作ごとに声かけをすると利用者は安心します。
例えば「シャワーをかけますよ」とか「ここの手すりを持ったらいいですよ」とか一つ一つ声をかけながら介助すると、利用者は頼もしい介護者がいると安心します。そして恐怖感も和らぎ、スムーズに入浴の動作が出来るようになるのです。
それでも恐怖感がとれていないと感じた場合は、体を洗いながら利用者に優しく話しかけたり、湯船につかっている利用者と一緒に歌を歌ったりするのもいいでしょう。
ここで気をつけなければならないのは利用者がどんな話を好むか、またどんな歌が好きなのかを知っておくことです。
中には、話や歌がうるさいと思う人もいるでしょう。静かに黙って湯につかるのが好きな人にはそのように対応しなければなりません。
事前に利用者の生活歴や人生観を把握しておくことがこの場合も有効に働きます。「生活の意向をアセスメントする」ということがここでも有効になります。

脱水と低温やけどの防止策

日々忙しい介護者は利用者の身体をゆっくり診る暇がないかもしれませんが、脱水や低温やけどなどは表に現れる症状だけをみていると、大したことでなく見えるので見落としてしまって大事に至らせてしまうことがあります。
一般的に言って高齢者には腎機能が低下している人が多いのですが、腎機能が低下すると季節に関係なく脱水症状を起こします。本人から喉の渇きの訴えが一言もないのに、脱水が原因で気がついた時には昏睡状態に陥っているという事例もありました。
特に在宅の場合は、いろいろな職種の人が入れ代わり立ち代りやってくるので、その間の連絡が密でなく一日の水分摂取量が管理できないのです。この点、家族が意識して摂取量を知っておく事が大切でしょう。

脱水を防ぐには、一日の水分摂取量を把握したうえで、時々の気温の変化に敏感になることが求められます。
また、本人のちょっとした変化をとらえられる洞察力や観察力が大切になってきます。気温の高い夏場では、汗が出ていなくても、水分は意外に奪われているものです。
その時、本人の皮膚に弾力が無くなっていたり、唇が渇いていたり倦怠感を訴えたりする場合は脱水を疑わねばなりません。

一方の低温やけどですが、温熱便座や湯たんぽによるものが多く、温度によっては1分程度でも低温やけどを起こしてしまっている例もあります。
特に糖尿病の人で、感覚障害のある人は訴えが遅れるので見落としているケースがあります。低温やけどの特徴は、皮膚を見ただけでは大したことがないように見えるけれど、実は内部で壊死(えし)が進んでいるケースがあるのです。
熱さを感じても体が思うように動かない高齢者も多いので普段の利用者の能力を知っておかねばなりません。
また熱いものに触れた場合、例えば便座に長く座っていたりした場合には、皮膚が赤くなっていないかどうかなどを見てみることが大切です。

ちょっとした利用者の変化に敏感に気づくこと、またちょっとした変化をもキャッチできる洞察力を養うことが介護者には求められています。
洞察力や観察力を有効にするには、こういう時にはこんなリスクが潜んでいるという知識を持っていることが大前提になります。
そこで介護者には医学的な知識を習得することが求められます。とは言え、利用者の環境は一人一人違っていて複雑なので、いざ現場に立ち向かってみると得ていた知識を忘れる時があります。
そういう時には、直観と想像力が頼りになります。利用者の家庭に訪問して、この部屋は暑いなと感じたら脱水のリスクを思うとか、直観力が有効な働きをすることがあります。

直観・想像力鍛える

直観力や想像力のことを介護現場では「気づき力」とか「センス」とか言って、介護者本人の生まれながらの特質に帰しています。
確かに生まれながらの個人差はありますが、それを組織全体でカバーして差を縮めるように鍛えることも可能です。

ばらばらの情報を一つの線につなげることが大切です。介護職にいる人は同僚が報告してくる様々な記録やアセスメントをすくい上げて頭に入れ、その上で仕事にかかるというのが基本中の基本です。
この時、それらの記録やアセスメントをばらばらに覚えておくのでなく、多くの記録を総合してそこから何が出てくるかを考えることが重要です。

次に、例をあげれば、ある介護士から「利用者と一緒に散歩から帰ってきた」と報告があったとします。一方、記録を見ればその日の水分摂取量がいつもと変わっていないと分かる。また、天候や気温欄を見ると結構暑い。
その時、散歩後に水分はとっただろかと想像することが大切です。そして、もし飲んでいなければ脱水の危険性が高まると気づく。
最初はそこまでなかなか考えられなくても、訓練を重ねているうちに自然に気づくようになります。思考を習慣づけていくことが大切になります。

自分の頭の中だけで複数の情報やアセスメントをつなげていても、それは発展していきません。必ず職場のミーティングやカンファレンスの場で発表したり、専用のシートに記入するという作業をしなければものになりません。
頭の中で考えていたことを公式の場で発表したり、文章の中に残したりする行為には物事を整理するという過程が必要になります。
この整理するという行為の中で自分の考えの矛盾点を発見したり、新たな「気づき」が生まれてきたりするのです。
そして、思考を整理するうちに直観力や観察力が飛躍的に伸びてくるのです。

最初は発表や記述の中に矛盾点が混ざっているでしょう。それを解消するにはOBやベテラン職員に「スーパーバイザー」として係わってもらい、その人たちのその都度その都度のつっこみを受けて立ち正しい考えに導いてもらうことが大事です。
もう一つ、自分の立場と違う人たち、例えば他職種や利用者やその家族とコミュニケーションをとるのが苦手だなと思わないようにすることです。
常に相手の立場に立ち、この発言は分かってもらえたかとかこの記述を読んで相手はどうとったかなど、自分に問いかけることが必要です。
相手の立場に立つということが直観力や想像力の基本だと心得てください。

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