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介護事故最多「転倒・転落事故」を防ぐ(後編)
介護事故最多「転倒・転落事故」を防ぐ(後編)

介護事故最多「転倒・転落事故」を防ぐ(後編)

「転倒・転落事故」はなぜ起こるか

介護の現場で起きるいろいろな事故の内、8割以上を占めているのが、「転倒と転落」です。
そもそも何故転倒や転落が起きるのかと考えてみると、それは人間が活動的な動物であるということと、意思を持っている動物であるというところから来ているのです。

転倒事故のほとんどは、歩行中に起きます。歩行中に起きるということは、活動しているときに起きているということです。
また、転落事故というのはベッドから車椅子に乗り換えようとしたときや、便座から立ち上がろうとしたときに起きます。
例えばベッドでじっと寝ていた利用者が、食事の時間に食堂に行こうとする。そのために車椅子に乗り換えようとする。
だが、背筋や腹筋が弱っているので、体を支えきれない。そこで転落してしまう。

そこで、転落した原因を考えてみると、食堂にご飯を食べに行きたいという意思から発しています。
この意思を無視して、転倒や転落事故を防ごうと、今でも「身体拘束」が行われているところがあります。
身体拘束というのは、本人の意思をシャットアウトして事故を防ごうという考えです。
が、これは、本人が苦痛から脱出したいという意思を助長し、かえって事故を発生させる元になるのです。
身体拘束すれば事故が防げるという考えは、間違っています。

集中力や利用者との相性を見る

現場のスタッフが「本人リスク」をしっかりと見極めていれば、転倒や転落の危険をある程度回避できるということは、今まで述べたとおりですが、当のスタッフが、忙しさから、集中力を切らせていれば、どんなに手厚いアセスメントを取っていたとしても、効果が期待できません。
夜勤明けで疲れがたまっていたり、一人の介護士に仕事が集中していたりすると、本人リスクにかかわりなく、転倒や転落事故が多くなる傾向にあります。
また、本人と介護者の相性の問題が、大きく介護に影響することがあります。
どんなにできた人でも、嫌いな相手や、一緒にいると疲労を感じてしまう相手というものが居るものです。

これはスタッフ側がどんなに正そうとしても、解消できるものではないのです。
利用者が、相性の悪い介護者から介護を受けたとすると、ぷいとその場を離れようとしたりします。
こうした場合、転倒や転落のリスクが当然増えます。
現場の管理者は状況をよく見極め、介護者の疲労度や集中力に注意し、利用者との相性にも目を向けて、場合によってはシフトを変えてみる必要も出てきます。

技術や観察力の未熟さをカバーする

スタッフに十分な集中力もあり、相性もわるくないとしても、スタッフの介護能力がレベル以下であったなら、利用者に危険が伴います。
これを避けるには、介護者向けの研修をどのようい行うかが重大になってきます。
しかしその研修を何のためにやるのかという動機づけがないと、介護者が真剣に取り組んでくれません。
動機づけのないままに研修会や勉強会に行かせても、得るものは少ないのです。

では、どうしたらいいのでしょうか。
効果があるのは、現場の中でどんな時に転倒や転落の危険があるのかを体感させることです。
方法としては6か月か3か月に1日程度の割合で、現場の未熟なスタッフにベテランスタッフをつけて、マンツーマンで指導させることです。
丸1日一緒に勤務しながら、この場面は危ない、あの場面も危険だったと、危険のポイントを教えることです。
この「職場内で部下を指導する」OJT方式は、目の前のリスクを指摘されるので現場はいつも危険と隣り合わせだということ知らしめ危機感を持たせるために有効に働きます。
同時にやらなければという強い動機づけが本人の中に湧き出てくるのです。

スタッフのアセスメントの仕組みを作る

スタッフ側のリスクの把握は介護現場でなかなかシステム化しません。
その時その時に管理者が気が付いたとき、「具合が悪いの?」とか介護者に会話風に聞くのみでそれは普通の世間一般の会話として流されてしまいます。
それでは、現場の事故防止の一貫した流れに結びつかないのです。

重要なことは、利用者に行うアセスメントと同程度のレベルで、介護者のことも気にかけねばなりません。
それには日々現場スタッフの心の状態や身体の状態、加えて技能のレベルを管理者が把握しておく必要があります。
そのためのシステム作りをしなければなりません。
そのために専用のチェックシートを配布して、現場管理者が一定期間ごとに記入しそれを事業所長や施設長に目を通してもらうようにしなければなりません。

その時注意することは、スタッフの身体の状態や技能レベルのような目に見えやすい所だけをチェックするのでなく、表に見えない心の状態や、利用者との相性の問題まで、気を配ることです。
ただ漠然とスタッフの外観を見ているだけではだめで、管理者の側からいくつかキーワードを提示し、その反応で相手の気持ちを引き出すということも大切になってきます。
それを自然に行うには、会議の場やカンファレンスの場を利用するのもいいと思います。

慣れがリスクを呼ぶことに注意

ここでは「環境リスク」について考えます。転倒や転落事故の場合、特に環境が与える影響が大きいからです。
転倒事故の場合どんな環境リスクがあるかというと、例えば利用者が歩く動線上に段差や滑りやすい個所などがあれば、転ぶこと必定です。
そんなことは現場の介護士なら、皆知っていることですが、こんな初歩的なことに注意するのも転倒を防ぐよき手立てとなります。
又、転落事故で言えば、ベッドや便器の高さや形、手すりの位置などが問題になってくるでしょう。

それ以上に、気を付けなければならないことは環境の変化に伴って生じるリスクです。
いわゆる「環境変化リスク」です。
本人リスクを説いた時も、時間の変化に伴ってリスクが出てくる場合があるということを言いました。
環境リスクも、変化に伴うリスクが生じます。

例えば、本人の歩く動線上にいつもと違う塵が落ちていたとします。
何でもないそんなものにも躓いて転倒する恐れがあるのです。
ところが介護者がそれに気づかず、いつも歩行している所だからと油断していると利用者が転倒してしまうことになります。
転落の場合でもベッドの手すりにタオルなどかかっていたというだけで、いつもと違い転落してしまうことがあるのです。
環境の変化には、慣れを捨てていつも敏感でいなければなりません。

環境リスクを見取り図でチェック

環境変化リスクを見落とさなくするためには、日常の利用者の動線に沿って、「事前の環境アセスメント」を取っておくことが大切です。
例えば訪問介護の場合はサービス提供者の責任者が事前に利用者の家を訪問し、床に段差はないか、必要なところに手すりはあるかなどを、見取り図を描いてチェックしておきます。
そしてそれをもとにして、ホームヘルパーが利用者宅を訪問する前に注意個所を知らせておきます
施設の場合なら、定期的にスタッフが施設内を点検して、危ない個所を見取り図にチェックしておき、全員でそれを確認するようにします。

外出介助を行う前には、予定が決まっていれば、現地に出かけて行って、危険な個所をチェックすることが必要です。
施設のバスツアーでも、できることなら下見に行って、環境リスクを知っておきたいものです。
出先の施設で、トイレが、車いすで行けるかどうかなどを事前に確かめておいたほうがいいでしょう。
このようなチェックリストを作ることで、「環境リスク」を、全員が理解するようになります。

タイミングを見極める

転倒を防ぐには、まず歩行中の見守りが大切です。
歩行中の見守りということを念頭に置けば、介護者は利用者が転倒しそうになった時に、すぐ手が出せる位置にいなければなりません。
また、何かのきっかけで前のめりの体勢や、早足になった時、利用者の視界の中に自分を入れるようにします。
そして、声掛けをするとはっと気づき利用者が自分を取り戻すことが出来ます。

施設で、廊下の曲がり角が多いところは確認ミラーを取り付けるといいでしょう。
在宅介護で死角になるところがあれば、利用者や家族と相談して全身の映る鏡を置くといいと思います。
問題になるのは、居室やトイレの中で、介護者が一日中ついているわけにはいかないところです。
利用者のプライバシーということも考えなければならないし、監視を強くするとかえって利用者が落ち着かなくなり、事故が増えるということもあります。
トイレや居室に関しては、最近、赤外線やその他を使った監視装置が見られるようになりました。
職員の負担軽減のことを考えるとそういうものの導入も積極的に考えるといいと思います。
あくまでも本人リスクを正しく把握し過度に装置類に頼らないことは重要ですが。

ADL向上のためのケアのポイント

目先の転倒に注意するだけでなく、長い目で見て転倒や転落事故を防ごうとする場合、本人のADLを維持向上させることが大切になります。
それを目的としたリハビリテーションは欠かすことが出来ません。
施設では個別リハビリテーションが計画的に行われますが、在宅の訪問介護においてもちょっとした運動でもいいので、声掛けをして体を動かせてもらうようにします。

その時、重要なことは本人の意欲をどうやって引き出すかということです。
前にも言ったように、ここで「動機づけ」が必要になってきます。
本人が「外に出て散歩してみたい」と思ったり、「トイレには人の世話にならず自分で行きたい」とか思ったりしたら、積極的にリハビリをするでしょう。
でも、本人が自ら意欲を出せない時、意欲を導くために普段から利用者の生活感や生活の意向を知っておく必要があります。

また、ADLの向上を図る過程において、自分で動こうとするあまり、一時的に転倒や転落事故が増えることがあります。
その時に大切なのは「変動リスク」を、念頭に置くことです。
そのために日々の動きを専用シートに記録し、現場の管理者がリスクの高まりを介護スタッフに周知させることが重要になります。

認知症にどう対応するか

転倒や転落事故を防ぐうえで介護者の悩みの種となるのが、認知症の利用者の徘徊や衝動的な動きです。
認知症特有の周辺症状(例えば夕暮れ症候群など)を頭に入れることは大前提ですが、どの職場でも周辺症状を緩和する具体的な方法に悩んでいます。

介護者はCDをかけて音楽を聞かせたり、人形を赤ちゃん代わりに渡したりして反応を確かめようとします。
それが効果を現して利用者が落ち着くという場合もあります。
これは事前のアセスメントでは分からなかった方法が、効果を見せたということになります。

現場でいろいろ試行錯誤しながら試した中で効果的な方法が見つかれば、随時アセスメントに加えて行きます。
その上で、試行→評価を繰り返し誰もが実践できる方法に整えていきます。
ここで一つ注意しなければならないことは「誰が・いつやるか」で効果がちがってくることがあるので、タイミングを図るのが難しいということを念頭に置かねばならないということです。

効果を試す具体的方法をあげてみると、聴覚に訴える音楽・視覚に訴える色・嗅覚を刺激する香り(アロマテラピーもよし)・ぬいぐるみなどの感触に訴える方法など、人間の五感に訴えるものはすべて試してみることです。
この辺では介護者の想像力が問われますので、介護者はいつも自己の感覚を研ぎ澄ますように訓練しておく必要があります。

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