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介護事故最多「転倒・転落事故」を防ぐ(前編)
介護事故最多「転倒・転落事故」を防ぐ(前編)

介護事故最多「転倒・転落事故」を防ぐ(前編)

「転倒・転落事故」はなぜ起こるか

介護の現場で起きるいろいろな事故の内、8割以上を占めているのが、「転倒と転落」です。
そもそも何故転倒や転落が起きるのかと考えてみると、それは人間が活動的な動物であるということと、意思を持っている動物であるというところから来ているのです。

転倒事故のほとんどは、歩行中に起きます。歩行中に起きるということは、活動しているときに起きているということです。
また、転落事故というのはベッドから車椅子に乗り換えようとしたときや、便座から立ち上がろうとしたときに起きます。
例えばベッドでじっと寝ていた利用者が、食事の時間に食堂に行こうとする。そのために車椅子に乗り換えようとする。
だが、背筋や腹筋が弱っているので、体を支えきれない。そこで転落してしまう。

そこで、転落した原因を考えてみると、食堂にご飯を食べに行きたいという意思から発しています。
この意思を無視して、転倒や転落事故を防ごうと、今でも「身体拘束」が行われているところがあります。
身体拘束というのは、本人の意思をシャットアウトして事故を防ごうという考えです。
が、これは、本人が苦痛から脱出したいという意思を助長し、かえって事故を発生させる元になるのです。
身体拘束すれば事故が防げるという考えは、間違っています。

24時間の日常生活動作(ADL)を知る

介護事故・トラブルをなくすための一歩(前編)で「事故防止3原則」について考えました。
まず第1にあげた「本人リスクの確認」ですが、根本として、きちっと押さえておかなければならないことは、利用者の「身体の状態」と「精神状態」と「生活への意向」です。

認知のあるなしを知っておくことも大切です。
「身体の状態」では、「独立歩行」がどれくらいできるか、「座位」をどの程度保てるかなどを知ることが大切ですが、そういうことは今ではほとんどの施設や事業所で、詳しくアセスメントが行われています。

ただ、もう一歩進んで、昼と夜の能力の違いや、場所や状況によって、できることの能力が違って来るというようなことまで、考慮しなければなりません。
例えば、昼の間は独立歩行ができていた人が、夜間のトイレではふらつくということもあります。
また、元気な午前中は長いこと座れていた人が、疲労の出る午後では長時間座れないということもあります。
このように利用者の24時間のADLをつかんでおきたいのですが、在宅介護の場合は難しいので、家族と密な連絡を取り、聞いたことを、客観的な情報として落とし込んでいく必要があります。

医学的、栄養的情報を読解する

転倒や転落事故と身体の関係を考える時に重要になってくるのは、本人がどんな既往症を持っているか、また、今、どんな薬を飲んでいるかということなどを、大切な要素として把握しておかねばならないということです。
例えば、飲んでいる薬によって、ふらつきが出るかもしれません。
また、低栄養から来る貧血を起こしているとしたら、これも大きなリスクになります。
これらの情報を得るには、担当医師、看護師、栄養士からの情報を、いつでも得られるようにしておかねばなりません。
また、状態は変わっていくものですから、いつも新しい情報を得ることが大切です。
そして、その変化をきちんと理解できる能力が必要です。

「定期診断」によって、新しい病気が発見されることもありますし、それに伴って新しい薬が処方されることがあります。
その時いかに早くその情報が現場に届くかが、転倒や転落事故を防ぐカギになります。
在宅介護では、ケアマネジャーがいかに早く、現場の介護者に伝えるかがポイントになりますが、サービス提供者である事業所も、連絡ノートをフルに活用して、変化を素早くキャッチして、実際の介護者に伝える必要があります。
与えられた情報を正しく認識するには、現場で、常日頃研修を重ねて、医学的・栄養学的知識を、正しく習得しておく必要があります。

本人の心の状態や認知度を知る

転倒や転落事故を防ぐのには、本人リスクの2番目に挙げた「本人の心の状態や認知度」を知ることが、重要です。
例えば、利用者が認知症であった場合、自分が歩けないということを認識していません。
こういう場合、衝動的にトイレに行こうとしたり、目の前にあるものを取ろうとしたりして、転倒するのです。
こうしたケースを考えると、身体的アセスメントだけでは不十分で、利用者がどこまで認知できているかを知ることが大切になります。

では、認知症の人を、ベッドから降りさせないように、4点柵をつけるのはどうでしょうか。
4点柵は「身体拘束」となり、よくないのですが、もし4点柵を取り付けた場合でも、目の前の柵が邪魔だからと乗り越え転落することがあります。かえって、事故を助長する結果になったりします。
つまり、何かをすることによって、本人の感情をどのように刺激するかを考えないといけないというわけです。
本人の心の状態をよく把握したうえでケアすることが、転倒や転落事故を防止する上で、大切なことになります。

生活への意向を知る

前述の「身体的リスク」や「心の状態によるリスク」は、今では、たいていの介護現場で詳しくアセスメントが行われています。
しかし、この2項目だけでは十分ではありません。一番大切なのは、3番目の「生活への意向」又は「望み」が引き起こすリスクなのです。
転倒や転落事故は、人間が活動的生き物であるところから、生じるのです。
人が活動するということは、その人が長年培ってきた生活習慣や、こんなふうに生きたいという意思を動機としています。
だから、それはその人の人間らしさを表す一番の指標と言えるのです。

例えば、自然とともに生きてきた高齢者がいたとしましょう。
そういう高齢者は、都会の喧騒の真ん中にいても、虫の音や鳥のさえずる声を敏感に聞き取るものです。
そんな時、その人は、虫の声に近づこうと、窓際に行こうとします。
そうして、転倒するということがよくあります。
もしも、利用者の生活の意向がどんなところにあるかを知っていたなら、意識して、本人の動きを観察し、事前に転倒を防ぐことが出来たでしょう。
小さいことのように見えますが、本人の望みを知るということが、事故防止に役立つのです。

生活の意向をくみ取る努力をする

利用者の生活の意向をどうやってくみ取ればいいのか。
介護保険のケアプランは、利用者の意向を汲んだうえで、生活の質(QOL)を上げるためのケアプランを作ることが必要とされています。
しかし実際に作られているプランは、家族の意向のみを書いていたり、単に抽象的に書かれていたりして、本人の意向から、かけ離れている場合があります。

生い立ちや趣味、簡単な生活習慣を聞き取るぐらいで、プランを作成しているということも多々あります。
ケアマネジャーや施設の中の相談員は忙しく、時間が取れないので、そうなるのも、やむを得ないといえる面もありますが。
そのような場合、利用者の生活への志向や生活観をくみ取るための「専用シート」を作ることが必要になります。
また、現場の介護者が、利用者の意向に気づいた時点で、それをシートに書き加えていく作業も重要になります。
更に言えば、そういうことを細かく出来る介護者を育成していくことが大切になります。
そしてまた、今まで、それぞれの立場で、積み重ねてきたアセスメントが本当に正しいかどうか検証し、必要とあれば正していくことが大切になります。

ADLは「自立」と記されていても油断はできない

本人リスクの把握がなされているにも関わらず、転倒や転落事故の危険にさらされることがあります。
日常生活動作(ADL)のアセスメントにおいては、「自立歩行が可能」となっていても、状況によっては、かえってリスクが高まることがあります。
前に言ったように、時間帯や服薬の加減によって、ふらつきが出てきたりすることがあります。

また、自立歩行可能というところだけを読んで納得し、詳しく見ていくと「すり足歩行」となっているのに、それを見落としている場合もあります。
自立歩行可能と言えるかもしれませんが、このすり足歩行はちょっとした段差や床の滑りで転倒しますから、危険極まりないものなのです。

その上に認知症などがありますと、ちょっとしたことで本人の感情が乱れて足早になったり早く家に帰らなければと、思い込んだり、誰かをすぐに追っかけたりすることがあるので転倒に結びついてしまいます。
認知症がない人でもあれをしなければと思いついて、急に立ち上がったりすることもあり転倒に結びつく危険性は常に秘めています。
すり足や、認知気味というような、詳細なアセスメントが現場の介護士に十分伝わっていないから、自立歩行ができるという項目だけを見て、油断して、転倒に至らせてしまうケースがあります。この点も注意するべきです。

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