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介護事故対応完全マニュアル(後編)
介護事故対応完全マニュアル(後編)

介護事故対応完全マニュアル(後編)

利用者がけがをしたなどの緊急性を要する事故が発生した場合を考えますと、事前にその時の対処法を、しっかりマニュアル化しておくことが、求められます。対処法をスタッフ全員に徹底させた上で、訓練を行うということが基本です。
緊急性を要する事故の場合は、「利用者の生命の安全を確保すること」が絶対条件です。
急な事故の場合、スタッフ側が、とっさに正常な判断を下せないことがあります。
そういう意味で、正しいマニュアルと、常日頃の訓練で、対処法を体で覚えていることが大切になります。

事故対処マニュアルは、3つの基本を押さえていなければなりません。
1.状況観察の方法
2.救命法について
3.緊急時の連絡体制について

この3つの基本を時系列でチャート化します。
マニュアルはけがの場合、容態が急変した場合、火事の場合というように、事故のケース別に作ります。
そして、内容を定期的にチェックする必要があります。
また、緊急時の連絡体制を確保しておくことが、非常に重要になります。
連絡先としては、医師や利用者宅は勿論の事、法律の専門家(弁護士)なども、決めておくことです。

事故記録の書き方

ここで、組織のトップに、正確に迅速に事故の内容を伝えるには、どうしたらいいかを考えます。
第1は、記録の様式を整えます。第2に、記録の提出や口頭の報告を迅速化するシステムを考えます。第3は、記録された事故を分析し、次の事故防止に活かすことを考えます。

必要な5つの項目

記録様式としては、5つの項目を立てることが望まれます。
1.利用者の氏名と担当者の氏名及び事故発生の日時
2.事故発生の場所と環境
3.事故発生時の具体的状況
4.事故に対してどう対処したか
5.利用者が抱えているリスクの状況

これ以外に、各事業所による独自の項目を付け加えてもいいのですが、第1報は、簡素な方が、わかりやすくていいともいえます。
1からから4は、現場のあらゆる記録において、基本的な項目ですが、5は、この場面では大事な項目となってきます。
5にどんなことを担当者が書いているかによって、担当者がどれだけリスクを理解しているかを、管理者が知ることが出来るからです。
記録を書かせるのは、新たに事故防止意識を高め、再発防止につなげようとする目的もあります。

記録技術の向上を図る

記録で大切なのは、様式よりも、正確に書けることが大切です。
事実を正確に書くために、「記す側の技能の向上」が求められます。事故記録の場合は、特に、利用者側の信頼を得るために、真実を記す技能の高さが求められます。
定期的に研修して、記す側の技能の向上を図ることは言うまでもないことですが、ポイントとなるのは、4W1Hを意識させることと、記録者の憶測をできるだけ取り除くことです。

4WはWho,When,Where,What、1Hとは、Howです。
誰が、いつ、どこで、何を、どのように、です。これは他の人に物事を伝える基本要素です。
日本語では時々主語が抜けますが、記録ではちゃんと主語を書いておかなければなりません。
そうしないと、内容があいまいになってしまうからです。

例えば「座って様子を見ていた」と書いてある場合、誰が座っていたのか、利用者が座っていたのか、介護者が座っていたのかわかりません。そういうあいまいな書き方をしないためにも、「記す技能の向上」が求められます。
ここでは「Why(なぜ)」を外していますが、これは、「憶測を排除する」ことを目的として、あえて外しているのです。

憶測排除を徹底する

現場スタッフが記録を書くときに問題になるのが、知らず知らずのうちに、憶測が入ってくることです。
例えば利用者を見て、「眠そうだ」とか、「痛そうだ」と書くことがあります。
利用者を身近に見ていると、その人のことが分かった気になるのですが、憶測がエスカレートすると、危険なことになります。

はじめのうちは、「~のようだ」とか、「~そうだ」とか、「ようだ」、「そうだ」がついているので、管理者も、これは、介護者の憶測だなと分かります。
ところが段々とそれがエスカレートして、「痛がっていた」とか、もっとひどい場合には「痛いと訴えた」とかにかわってしまうことがあるのです。
この場合、事実を意識的にねじ曲げようとしているのではなくて、慣れがそうさせてしまうのです。
こんなことが重なっていくと、管理者はいつの間にか間違った判断に導かれていきます。
それを防ぐために、憶測の入りそうな「Why」の項目は抜いたのです。
また、憶測を排除するために、本人リスクをしっかり見据えて書いてもらおうと、記録シートに本人リスクの項目を入れましょう。

記録の重要性を認識する

一つの事故の裏には、30もの、事故に至らない危険な事例が潜んでいるといいます。
事故に至らない事例だったけれど、危なかったことは、「ひやりはっと事例」と呼ばれています。
「ひやりはっと」は、結果として、被害が生じなかったというだけで、根本的には事故と変わるところはありません。
その意味では、同列です。ひやりはっとで済んだからと、軽く見てはいけないのです。

介護現場では、いま、事故記録とともに、ひやりはっとも記録するようになりました。
だが一方で、これくらいの事なら書かなくていいだろうという気の緩みも出てきます。
しかしそれを正確に書いておかないと、「ひやりはっと」の正しい頻度が把握できず、情報として価値のないものになってしまいます。
ひやりはっとの記録は、未来の事故防止に役立ちます。
このことを介護スタッフに分かってもらい、とりあえずどんな小さなことでも書くという習慣を身につけてもらいましょう。
トップはそれを見て、これは見過ごせないという事例があれば、さらに詳しい記録を提出するように求めるといいでしょう。

損害賠償や訴訟に対応する

利用者の家族との信頼関係が良好と思っても、場合によっては、損害賠償を請求されたり、訴訟になったりすることがあります。
これからは権利意識の強い世代が、利用者家族の代表になりますから、訴訟は増えてくるでしょう。
介護事故の損害賠償に関しては、介護事業者向けの損害保険に必ず入っておきます。
社協が手掛ける「事業者総合保険」などがあります。

また、介護問題について詳しい弁護士と知り合っておきましょう。
介護の事故というのは非常に特殊なケースが多いので、その業界の知識を備えている弁護士でないと、承認選びや証拠選びで的確なことが出来ません。だから、弁護士を選ぶ場合には、過去の訴訟歴をよく調べることが大切です。
事故が起こった時、万一訴訟になったらと想定して、当事者の事故記録やケース記録を全部保管しておくことが大切です。
仮に取り落としていた資料などが後から出てくると、それが隠蔽工作と見られ、裁判官の心証を悪くします。
刑事裁判の時は、なおさら資料収集や保管を厳重にしておくことが大切です。

事故記録を分析して再発防止につなげる

事故記録をどのように分析し、それをどのように、事故再発防止につなげていくかを考えましょう。

まず、重大な事故については、発生の状況や原因を詳しく分析するために、リスクマネジメント委員会などで、単独で、詳しく検討します。
その時、本人リスク、スタッフ側リスク、環境リスクについて徹底的に究明します。
次に3つのリスクが分かった段階で、その3つのリスクを総合して何故その事故が起きたかを分析します。
理由が分かればその原因を根絶する方法を話し合います。そして必ず議事録に分析の結果だけでなく分析の過程経過も残しておきます。

次に比較的軽い事故については、類似した事故を一つのグループとしてまとめ、数が多い物から順番に取り上げて検討します。
検討の際には、まず、それぞれのリスクの中から共通性のあるリスクを割り出す。そして、そのリスクはどういう時に高まるかを、討論する。最後にリスクを可能な限り減らす方法について考える、という順序で議論していきます。
議論と検討の結果を踏まえて、最終的には防止策を討論し答えを必ず印刷して、現場のスタッフに配布します。
そして、スタッフを集めて再発防止をテーマに研修を重ねます。
また利用者の家庭には、議論の結果まとめた「事故再発防止策」を印刷して配ります。

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