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介護事故・トラブルをなくすための一歩(後編)
介護事故・トラブルをなくすための一歩(後編)

介護事故・トラブルをなくすための一歩(後編)

形式だけのケアマネジメントは事故を呼ぶ

介護の第1原則は、勿論「本人リスク」を把握して、それを「ケアマネジメント」に反映させることです。
事故を防ぐ第1条件は、それにほかなりません。
最近では、介護の現場で「利用者のアセスメント」をしっかりとり、利用者の生活への意向もしっかり踏まえて、ケアマネジメントをするという流れは定着しています。
しかし、それがケアプランという書類作成の場に移った時、書類作成のための単なる表作りに終わってしまって、中身のない形骸化したものなることが多いのです。
言い換えれば、利用者を置き去りにした、介護者のためだけの作業になってしまうのです。
実はそれが、事故やトラブルを多発させてしまう要因になるのです。

前にも言ったように、事故やトラブルは、きわめて、人間的な感情から、誘発されるものなのです。
利用者本人の心の奥底にある希求や、抑えられない感情が外に現れて起こるものなのです。
※例えばとりたい物があったりすると、無理をして立ち上がってしまうなど
形式や建前だけのケアマネジメントでは、抑えきれるものではありません。
大切なことは利用者の真実に迫ること、利用者の人生観や価値観にきちんと向き合うことなのです。

現場で働く人の心の状態を慮ろう

前に、利用者の人生や希望に向き合うことが必要と述べましたが、それを実行することは、生易しいことではありません。
相手の利用者の過去を引き出すということは、介護者本人も自分の内面をさらけ出す必要が出てくることにもなるのです。
誰しも、自分の内面は隠していたい。
そうそう内面をいつもさらけ出していると、自我が崩れ、精神状態のバランスを保つことが難しくなるからです。
自分も裸になって利用者に向き合えないようでは、プロと言えないという声もあるでしょうが、そう言い切れるほど生易しいものではありません。介護者も生身の人間です。

特にまだ若くて、自我の確立していない、社会的に経験の浅い若いスタッフにとっては、きついことなのです。
往々にして、心のバランスを崩してしまう介護者が出ます。
上司や管理者はそのことに配慮して、介護者がどのような心理状態にいるか、常に把握する努力をしなければなりません。
ちょっとした集中力の欠如から、大きな事故を招くことがあるからです。
利用者のアセスメントをとるなら、介護者の側のアセスメントもとる、ということをシステム化する必要があります。

利用者と介護者の関係は常に変動する

いつも言うように、介護は利用者と介護者の関係によって成り立っているのですから、お互いの気持ちが変わると、リスク管理の方法も変えていかなければなりません。
たとえ根本的にはお互いの気持ちが変わってないとしても、周りの環境や他のさまざまな要因によって影響を受け、微妙に両者の関係が変化していきます。

男女の恋愛関係だってそうでしょう。愛は揺らぎない、二人の結びつきは強いと思っていても、ちょっとしたことでずれていくことがあります。
介護においてもこれに似たような現象が起こります。
信頼しあっていた介護者と利用者が、ちょっとした行き違いや誤解から、相手に疑念を持ったりすることも生じます。
また、利用者が、昨日までできていたことが、今日できなくなるとか、利用者の状況が変化して、二人の関係が変わっていくこともあります。そのようなときに新たなトラブルが生じることがあります。

つまり、タイミングや環境によって、両者の関係が変化すると、リスクも当然変化します。
「リスクは常に動くもの」という認識がないと、事故やトラブルを防ぐことが出来ません。
システムが出来上がってしまうとそれに安住する傾向がありますが、それはたいへん危険なことなのです。

事故防止の仕組みをチャート化

先にあげた3つのリスク、「本人リスク」「介護者リスク」「環境・変動リスク」の3原則を抑えたうえで、事故・トラブル防止の仕組をつくります。
その時、上層部の理念と現場の取り組みが断絶しないように、全体の流れをチャート化します。

まず第1に、現場で起こった事故やトラブルをもれなく拾い上げる必要があります。
その時、頼りになるのが、実際に事故などが起こった時に現場から提出される「事故報告書」、あるいは、「ヒヤリ・ハット報告書」と呼ばれるようなものです。
次に現場から報告された事故やトラブルに対する対応の仕方を、ランク分けします。
Aランクは「緊急対処」、Bランクは「ケース検討」、Cランクは「経過観察」というように分けるのもいいでしょう。
そして、事故が起こった時、現場の者と専門職の人がチームを組んで、どのランクに該当するかを判断します。
そして、Aランクの事故が起こったら、「その日のうちに現場ミーティングにかける」、Bランクならば、「その週に臨時のケース討論会を開いて討論する」、Cランクならば「観察しながら、タイミングを見て定期の検討会にかける」というように決めておきます。
そうすれば、現場の事故やトラブルが、上層部まで届かないというような事態は起きないでしょう

ケース討論会や、臨時のミーティングで、事故・トラブルの発生を防ぐ方法を話し合うとき大切になるのは、やはり「3原則」です。
事故後、事故が起こった背景には、原則1の利用者のリスクに、何らかの変化が起こっていたのではないだろうか、原則2の介護者側の身体や心理に何らかの変化が起きていたのではないだろうか、原則3の利用者と介護者が置かれている環境に変化が起きていたのではないだろうかなど、3つの原則に照らして、アセスメントを行います。
その際に、医師や看護師や栄養士や、理学療法士や現場の管理者等の専門職との連携が欠かせません。
それらの人たちと連携をとる場合のことも、前もって、誰がどのように情報を発していくのか、決めておかなければなりません。

介護の現場では、チームケアが原則になっていて、定期的にミーティングも行われるし、まだ、情報の伝達がスムーズにいくのですが、訪問看護の現場では、介護者がばらばらに利用者の所に行っているので、介護者同士の横の連携がとりにくくなっています。
そこで、チャート作成の時から、サービスの提供者が情報入手のためのマニュアルを決めておいて、後々がスムーズに運ぶようにしておくことが大切です。
ここでは、ケアマネジャーと現場のサービススタッフの強い連携が必要になります。

事故やトラブルを防ぐことを考えるときは、必ず、3原則の上に立たねばなりません。
3原則に沿って、アセスメントを行い、それから具体的な方策を考えます。
まず、仮説を立て、仮説に沿って現場で実行し、その仮説が正しかったかどうか検証モニタリングします。そして仮説と実行の間に食い違いが生じていたら、改善します。
改善の後、新たに仮説を立て、実行、検証、改善と、続いていくのです。勿論、うまくいけば、そこで循環は断ち切られます。

ある利用者に対する、アセスメントからはじめて、仮説、実行、検証、改善とやっていくうちに、これはこの人だけでなく、もっと広く応用できるのではないかという考えがわいてきます。
個別事例の一連の流れを「専用のケース記録」に落としているうちに、このケースは、複数の利用者にも当てはめられるのではないかという視点が出てきます。管理者がそのことに気が付くことが大切です。
「普遍化できる」と判断すれば、リスクマネジメント委員会で検討材料にすれば、現場にいるスタッフたちは、自分たちの働きが認められたと、委員会への参加の意欲を高めていくことになります。

委員会と現場との位置づけはどうあるべきか

委員会に持ち込まれた課題は、「類似の事故やトラブルを起こさせないため」に話し合いにかけられます。
そこで案出された具体策は、また、現場に戻して実施し、その効果を見極めるために、もう一度委員会に戻されます。
ここでも、もう一度、仮説→実行→検証となるわけです。

委員会の決定を現場に戻す場合、注意することは、いくら現場からボトムアップされた課題であっても、現場で実行するとなると、忙しい現場の仕事に、影響が出てきます。
現場では、従来からの仕事のやり方や流れが出来上がっているので、そこに度々委員会からトップダウンの横やりが飛び込んでくると、混乱し不満が出ます。

だから委員会は、事案を検討しながら、現場の仕事の流れを、現場の統括責任者、たとえば、事業所長などから、アセスメントしておく必要があります。
そして、委員会で決まった仕事を無理なく実行できるポイントはどこにあるかを把握し、根回しをします。
根回しとは、たとえば、現場に出向き、ベテランを説得するという方法もあります。
また、実行するために、現場の人員配置を替えてもらうのもいい方法ですが、これには組織の改編が必要になるため、より一層密な根回しが必要になります。

ケアが変わる時はしっかりと説明する責任が生じる

委員会で決定された事項を現場におろすとき、注意することは、「現場の仕事の流れ」を見極めてからということだけではありません。
もうひとつ重要なことがあります。それは利用者の生活を乱さないということです。

たとえば、誤嚥性肺炎を無くすために「口腔ケアの回数を増やす」という決定をしたとします。
現場では、これは利用者にとって大変いいことだと信じて、いきなり実行に移してしまったりすることがあります。
けれど、利用者本人や家族の意思を全く無視しているこのやり方は間違っているのです。
何であれ、現場で新しいケアを始める場合は、必ずそのことを本人もしくは家族に説明し了承を得なければなりません。
これは、リスクマネジメントという観点からもきわめて重要なことです。

先の口腔ケアの例をとると、いくら口腔ケアの回数を増やしても、別の原因で誤嚥性肺炎が起こる場合があります。
そのとき、家族から、いつもと違うことをやっていたのに、知らされていなかった、ひょっとしてそれが肺炎を起こした原因になったのではないかと、不信感を持つ場合もあります。
それが、後々大きな問題に発展しないとも限りません。
だから、ケアの方法を変えるときは、十分に、利用者や家族に説明する責任が出てくるのです。

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